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♥19.夢か現か(11)
隘路を埋めるアンリの熱。継続的に弾むスプリング。なのにアンリの手はジークのどこにも触れていない。身体を揺することすらしていない。
腰を動かしているのは|ジーク《自分》だけだった。控えめながらも接合部を擦りつけるようにしながら、|胎内《なか》のいいところを自ら押し当てようと身体を揺さぶっている。止まらない。
信じたくはないけれど、それが現実だった。
「あ、ぁ、違……っ違うのに、身体が、勝手に……っ」
違うのに。
やめたいのに。
離れたいのにそれができない。
違うといいながらアンリにしがみつく。
やめろと言いつつアンリのそれを締めつける。
離れたいのに離れたくない。
「欲しいということだろう。もっと、私が」
ツンと隆起した胸の突起が、アンリの肌蹴たガウンや胸板に弾かれる。
そのたびビリビリとした甘い痺れが走り、背筋が仰け反りそうになる。
「……違、そんなことっ……」
「言っておくが、私はお前に触れてないのだからな」
(わ、わかってる……それは、わかってる……けどっ……)
こんなことなら、何も考えられなくなる方がましだ。
羞恥心ばかりが先に立って、顔もあげられないのに、
(……欲しい……|胎内《なか》に、アンリさんの、が……)
身体は言われた通りに欲しがっている。見るからに望んで、善がって、浅ましく先を|強請《ねだ》っていた。
「――いいだろう」
アンリは笑うように目を細め、小さく口端を引き上げた。
|堕《お》ちそうで堕ちないその様は悪くない。
どころか、自身もヒート中だからか、思いのほか興が乗る。
「えっ……あ、わ!」
アンリは不意にジークの身体を背後に突き倒すと、仰向けに転がったジークの脇腹に手を添えた。アンリの腰を挟んで投げ出すような格好になった下肢ごと、僅かに浮いた下半身は繋がったままだ。
アンリは無言で手に力を込めると、息を呑み、僅かに目を瞠るジークの腰を引き上げるようにしながら改めて繋がりを深くした。
「あぁっ……!」
淫猥な水音を響かせながら、突き当たるまで穿たれる。ジークは押し出されるように声を上げ、頭を仰け反らせた。
「あぁっ、や、待っ……待って……っ」
「待てないのはお前だろう……?」
落とされる平然とした声が、ことさらジークの熱を煽る。
アンリは一方の手をジークの中心へと伸ばし、とろとろと止めどなく雫を垂らし続けるその先端を指先で躙った。
「素直になってみろ。どうしたい」
「ぃ、っん!」
それだけでジークの腰がびくりと跳ねて、少量の飛沫があふれ出る。
せめてもと咄嗟にシーツを掴み、唇を噛むが、結局は堪えきれなくて頷いてしまう。
「だ、出したい……」
「中に欲しいのではなかったのか」
「な、かにも……ほし……っ」
口にしてからはっとする。慌てて取り消したいように首を振る。
やはりどう考えても変だ。
発情中の酩酊状態ならまだしも、これだけ思考能力のある状態で、自分がそんな懇願をするなんて。
前回の――意識がある中での時に似ているけれど、あれよりもずっと振り幅が大きい。身体が慣れてきているせいか、求めるものが明確だし、そのくせどこか俯瞰的に見ているかのような冷静な思考回路にますます追い詰められてしまう。
それが薬のせいだとは思わないジークは、ただただそんな自分が信じられず、いっそうの羞恥に身を竦ませる。
だけど、だけど――。
「あぁっ……んっ」
そんな迷いを試すみたいに内壁を擦られ、屹立を緩やかに扱かれると、まんまと天秤が傾いてしまう。理性ではなく、本能の方に。
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