142 / 146

♥【閑話】きりかぶの上で/ラファ×ギル(3)

 それが高ぶったままなのは知っていた。分かっていたのだ。  ジークの匂いに気付いた時から、ずっと身体の奥で熱が|燻《くすぶ》ったままだった。  本当は今すぐにでも慰めたい。ジークとは違い、少なくともギルベルトは出せればいいのだから。いくら淫魔のフェロモンにあてられたとはいえ、何も誰かに抱かれなければならないということはない。何なら自分でだって処理できるのだ。  なのにそれをラファエルが許してくれない。  淫魔がもたらす催淫作用は、適度に身体を弛緩させたりもするのだろうか。  一定以上に力が入らない。拘束されているからじゃない。無理矢理とらされている格好だけの問題じゃない。明らかに思うように抗えなくなっている自分に気付いて、ギルベルトは内心動揺していた。 「も、やめ……っくそ、気持ち悪ぃ……」  ずり下ろされた下衣が膝のところで|蟠《わだかま》っている。  姿勢は変わらず、上体は切り株の上。地面に膝をつき、腰を後ろに突き出したような格好のまま、ラファエルの指がその|谷間《たにあい》を探るのに今は奥歯を噛み締めるしかない。 「またそんな嘘ばかり言って……さっきから全く萎えてませんけど。それどころか、こんなになって……」  ほら、と不意に位置を変えたラファエルの手がギルベルトの屹立を包み込む。  先端を指が撫でると、ぬるりとした感触が嫌でも伝わってきた。|ギルベルト《自分》で思うよりずっと雫が溢れている。 「だからそれはっ……|ジーク《あいつ》のせいで……!」  身を捩り、何とか言い返しはするものの、背中を押さえられているため身体を浮かせることもできない。地面にこすれる膝には痛みが走り、切り株にぶつけた額もずきずきと疼いて、結局はその手から下腹部を逃がすことすらできなかった。  ギルベルトは何度目か知れない舌打ちを漏らし、吐き捨てるように「マジ死ね」と口にした。 「死ねは酷いな……」  どう聞いても負け惜しみとしか聞こえないそれに、ラファエルはふっと口端を引き上げる。 「でもねぇ、あの子のせいって言われたら……それはそれで妬けますしね」  そうして、独り言のように落とされた声はきわめて優しかった。

ともだちにシェアしよう!