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若頭補佐2
部屋へ案内される途中、あちらこちらで真志喜の姿を見た者たちがざわめいていた。
「あれが噂の日南組の真志喜?」
「嘘だろ…、予想外にも程があるぜ。あれで若頭補佐だろ?」
「噂では相当の実力者って聞いたのに、まるで女みてぇだな」
コソコソと話し合っていた2人組に、不意に真志喜が視線を向ける。
目が合った彼らがビクッと肩を揺らす中、真志喜はニコッと微笑みを浮かべた。
通された部屋で待っていたのは、交渉相手である池内組の組長と幹部、そして中年ヤクザと舎弟分が3人。
おそらく舎弟の3人は今回の喧嘩の当事者たちだろう。
なにも組長まで出向くことはないんじゃないかと溜息を吐きたくなるが、それをおくびにも出さずに真志喜は爽やかな笑みを浮かべた。
「いやぁ、この度は本当に申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げる真志喜に、早々に幹部の男性が噛みついた。
「本人が来ていないのは、おかしいんじゃないですか?」
そう指摘された真志喜は、なおもニコニコと笑みを崩さずに答える。
「自分はそうは思いません」
「何故です?喧嘩の被害者がこうして出て来ているのに、加害者側が来ないというのは妙だと思うんですがね」
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