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大嫌いな男6

建設途中で放置されたビル。 その建物を少し離れた場所から確認する。 「あれで間違いないんだな?」 「ん。報告通り」 別にコソコソ隠れる気はないが、被害は最小限に抑える必要がある。 今回は少数体制。といっても俺と迅を含めて6人。4人は若衆だ。 「よし。乗り込んで締め上げればいいんだな」 「真志喜待って」 「あ?」 早速身を乗り出した俺の腕を掴んだ迅に、振り返ると顎を掴まれて上を向かされる。 「真志喜は外で待機してて。どうせ先陣切って無茶やるだろ?もし怪我したら大変だ」 そして額に口付けられた。 しかし俺はその唇が触れるか触れないかのところで、拳をその鳩尾にめり込ませる。 「ぅグッ…!」 「ちょーしにのんなハゲ。怪我なら自分の心配しとけ」 「ちょ、これ…、マジで息できないやつ…」 苦しむ迅は置いてスタスタとビルへ向かう。 すると後から若衆の榎本が慌ててついて来た。 こいつは何故か俺に懐いてくれてる子分だ。 腕は確かなようで、こういう荒事の際にはいつもついて来ている。 「あ、兄貴、駄目ですって…!ちゃんと連携を…!」 「する気があんなら迅のやつが合わせればいい。あいつそういうの得意だろ」 そう投げやりに応え、俺は2人の制止に構わず中へと乗り込んでいった。

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