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あの頃4
「遅かったな彼方。もう少しで探しに出るところだったぞ」
「す、すみません…。あの、三浦さんが案内してくださって…」
「やっぱり迷ってたのか」
可笑しそうに笑う正嗣に、彼方はその白い頬を赤らめる。
そんな2人の穏やかなやりとりに笑みを浮かべていた清は、次には困ったように眉を寄せた。
「正嗣さんも、そんな簡単に成沢さんを1人にしてはいけません。もう少し注意して下さい。現に成沢さんは廊下でしつこく絡まれて困っていらしたんですよ」
「なに?そりゃ何処の礼儀知らずだ」
「真志喜です」
「………なるほど。これからは1人にしないよう気をつける」
すっと真顔になった正嗣に、同じく真顔の清が「それがよろしいかと」と頷く。
そんな2人のやり取りを戸惑いながら聞いていた彼方は、思い切って切り出した。
「彼、真志喜さんという方は、どういったお人なんですか?見た目で判断するのは違うと思うのですが…、どうもヤクザさんとは思えなくて」
あの華麗な姿を目にすれば誰もがそう思うだろう。
まぁ黙ってジッとしている真志喜を見れば、の話だが。
「真志喜は私と同じ若頭補佐ですよ。まぁその責務よりも切り込み隊長みたいなポジションになりつつありますが…」
「す、すごいですね…。俺なんて頼りないって周りからよく言われてダメダメなのに…」
「……まぁ、真志喜の場合は、少し特殊ですからね…」
「特殊…?」
不思議に思い首を傾げる彼方に、正嗣と清はどこか哀しそうに笑みを浮かべるのだった。
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