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隠した心4

無表情の真志喜に、小林は少し怖気ずく。 「おい」 「は、はい…!」 「あいつが面倒どうこうで、俺らに仕事押し付けるとでも思ってんのか?」 「!?」 周りが固まる中、真志喜は軽々とバランスボールの上で立ち上がる。 そして自分より目線が下になった小林へはっきりと告げた。 「そんなふざけた奴が、日南組の本部長やってるわけねぇだろ。そういう他に面目が立たねぇような発言は今すぐにやめろ」 「は、はい…!すみませんでした!」 そうして深々と小林が頭を下げたところで、事務所の扉が開き、清が入ってくる。 「ん。これはどういう状況ですか?」 眉を寄せる清に、再び座り直した真志喜は「なんでもないでーす」と手を振るのだった。 「あの、清さん」 「はい?」 声をかけた小林に、清は掃除をしていた手を止めて顔を向ける。 小林は少し躊躇った様子だったが、次には意を決して口を開いた。 「真志喜さんって、迅さんのこと嫌ってるんじゃないんですか?」 「え?……あぁ」 日頃の迅に対する真志喜の様子を思い出したのか、清は苦笑いを浮かべ、次には優しく微笑んだ。 「あれは、ただの照れ隠しですよ」 「え?」 「真志喜が誰よりも信頼してるのは、迅なんですから。あの獣が、随分人間らしくなったものです」 「……清さんって、サラッと毒吐きますよね…」 顔を引きつらせる小林に、清はニコリと微笑む。 そんな2人の会話など知らずに、パソコンをカタカタやっていた真志喜は「くしゅんっ」と案内可愛らしいくしゃみをするのだった。

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