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大好きな人2
服屋に連れていかれたものの、昔と変わらずファッションに関心がない俺は立ち尽くすのみ。
そんな中で黙々と服を選んでいった迅は、店員さんに声をかけ、俺の手を取り試着室へ向かう。
そして「まずはこれね。次にこれ。これとこれは一緒に着てね」とポンポン服を渡してくる。
正直、面倒くせぇ…。
ズボンだけとかではなく、全部着替えろと言われ、嫌々ながら着替えていく。
折角の休日だってのに、クタクタになりそうな予感が既にしまくっていた。
ベージュのMA-1に白のタートルネックスウェット、それに黒のテーパードパンツ(という服の名前らしい)。
まぁ肌触りもいいし、ゆるふわ〜なセーターとか着せられないだけいいか、と思いながら試着室のカーテンを開ける。
俺が着替え終わるのを待っていた迅と目が合い、そして何故か頭を抱えられた。
「…何してんだ」
「真志喜が可愛過ぎて辛い…」
「死ね」
速攻で暴言を吐いたのにも関わらず、迅は真剣な顔で俺を見つめてくる。
「いけない。これはいけないよ。何着ても可愛いとか、もう才能だよ真志喜」
「1回眼科行ってこいやハゲ」
「あぁ…。こんな姿いつまでも見ていたいけど、他の誰かに見せるのも嫌だなぁ」
「悪い、眼科じゃなくて精神科の方がよかったか」
頭を抱えたいのはこちらの方だ。
今にも鼻歌を歌い出しそうな迅を横目に、俺はこれからの数時間を思い激しく憂鬱になるのだった。
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