32 / 208
大好きな人4
「いらっしゃ……おお、迅、真志喜。久しぶりだなぁ」
そう言って笑顔で出迎えた彼、三浦凪は、ひどく繊細で整った顔立ちをしていた。
クセのない髪や白い肌、切れ長の瞳は美しく、一瞬で相手を魅了する。
スラリとした体のラインも、それだけで色気を感じさせるようだ。
「凪さーん!お久しぶりです!」
「うぉっ」
殆ど突進する勢いで凪に抱きついた真志喜に、ひくりと迅の顔が引きつる。
なんとか真志喜を抱きとめた凪は、さらに笑みを深めてその頭を撫でた。
「ほんとだよ。元気にしてたか?迅も変わりねぇ?」
「はい。なんとかやっていますよ」
話を振られ、やっと迅は動き出せた。
カウンターの椅子に座って、「ブレンド、お願いします」と凪に告げる。
「あいよ。真志喜は?何にする?」
「カフェラテがいいですっ。凪さんのラテ、大好き!」
そう言って凪さんに一層抱きつく真志喜。
真志喜がこうして心から甘えるのは、彼にだけだ。
いつものナンパとも違い、まるで子供のようにべったりになる。
彼は若頭補佐である清さんの弟さんで、俺の高校時代の2つ上の先輩だ。
今はここでカフェを経営しており、ヤクザとは無関係の生活を送っている。
まだ真志喜が誰に対しても警戒心が強かった頃。
本邸にやって来た凪さんに、偶々風呂場へ行くため外に出てきた真志喜は鉢合わせてしまった。
ともだちにシェアしよう!