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罠3
今回何故本部長の迅まで本邸にやって来ているのかといえば、要するに全体に召集がかけられているわけで。
月に一度の定例会。
その為に訪れている限りなのだ。
方向音痴の彼方さんをしっかり見送ってから、3人で定例会の行われる部屋まで向かう。
なんだかんだ互いに仕事があったから、こうして3人一緒に並ぶのは随分と久しぶりだ。
「昔はよく、部活で上手くいかずに拗ねた正嗣を慰めながら3人で帰ったよなぁ」
「おい迅。その言い方だと俺がいつもダメダメだったみたいじゃねぇか」
「あー、確かになんか言ってた気がする。『くそ、もう辞めてやる!』って何度も聞いた」
「そのくせ続けるんだもんな」
「うるせぇよ、悪いかっ」
そんな会話をしているうちに、目的の部屋まで辿り着いていた。
真志喜がその扉を開けようとすると、何やら中が騒がしいことに気づく。
「それは確かなのかよっ?」
「あ、あぁ。どうやら凪さんが…」
続く言葉を聞いた瞬間
真志喜は踵を返し、全力で駆け出していた。
「真志喜!」
後ろからの声も聞かずに飛び出し、真志喜はギリッと歯を食いしばる。
その表情は、恐ろしいほどに殺気で満ちていた。
先程聞こえた会話。
それが本当だとすれば、凪さんが危ない。
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