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罠5
喧嘩ばかりの毎日を送っていたろくでなしの俺は、周りに反発することしかできなかった。
ちっとも素直になれなくて、何もかもがどうでもよくて、拾われてからなんとなく生きてきた命に対して疑問を持つようになった。
何故、迅はあの時俺に手を差し伸べたのか。
それが分からず、しかし聞くことも俺にはできなくて。
そんな俺がいつものようにボロ雑巾みたいな格好で帰ってくると、そこには凪さんがいた。
俺より5つ上の凪さんは、何故だか出会った時からこちらに警戒心を抱かせない。
その時もいつものような優しい笑みを浮かべて、俺の頭を撫でてくる。
他の人間相手なら振り払ったりするのだが、彼に頭を撫でられるのは心地良くて大人しくされるがままになっていた。
彼は傷だらけの俺を見ても特に何かを追求してくることはなく、それがとても有り難い。
自分の深い部分に付け入れられるのは嫌いだ。
無責任に知りたがって、その後はきっと、何事もなかったかのように距離を取るだけ。
まぁそれをしなかった迅が、相当な変わり者なのだ。
「俺、近いうちにカフェを開くんだ。いつでも来てくれな」
そう言って笑った凪さんに、俺は間髪おかずに頷く。
後ろでワーワー言ってる迅を無視して、俺はただ、凪さんの綺麗な瞳を眺めていた。
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