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罠7

「おいクソじじい。こんなどこぞのチンピラがするような真似して、恥ずかしくねぇのかよ」  「な…っ」 「権力だけ持った能無しが、調子に乗ってんじゃねぇ」 中年ヤクザの顔がみるみるうちに赤くなっていくのが分かる。 その男が何かを発する前に、すぐ側にいた若い男が騒ぎ出した。 「調子に乗ってんのはテメェだろッ!この状況分かってんのかッ!?」 あぁ、よく分かってるよ。 殴りかかってくる男を目の前に、ニヤリと笑みを浮かべる。 こいつらは知らねぇみたいだけど── 集団って、意外と脆いんだよ。 纏まりのある集団ならともかく、こいつらは連携のれの字もない。 見た感じ、人数は40ちょっとだろうか。 学生時代、大人数とばかりやり合っていた俺を舐めてもらっては困る。 相手の拳をかわし、流れのままその顔面に回し蹴りを叩き込む。 とろい全体が動き出す前に、俺は集団の中へと突っ込んでいった。 慌て出す連中を殴り飛ばし、凪さんの元へと向かう。 掴みかかってこようとした大男を、一度しゃがみ込んで下から蹴り上げる。 凪さんを連れて逃げ出そうとした相手の元へ辿り着くのに、時間はかからなかった。

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