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陽だまり4
「真志喜。最近なにか、良いことでもありましたか?」
「え?」
朝飯を食べていたら、いきなり清さんにそう尋ねられて首を傾げた。
そんな俺の反応に、彼は料理を作ってくれた手を洗いながら笑みを浮かべる。
凪さんもそうだか、この兄弟は2人とも美人さんだと思う。
微笑む横顔をポケーっと眺めていると、清さんは再度口を開いた。
「なんというか、前よりも雰囲気が柔らかくなりましたよ」
「柔らかく?」
「ええ。迅が気になっているみたいでした。コソコソと私に聞いてきて。あれは見ものでしたね」
そう言って可笑しそうに笑う清さんに顔を引きつらせる。
相変わらず毒舌というか、ドSというか…。
…いい事、か。
何か変化があったかといえば、裕介のことぐらい。
そのことで俺の雰囲気は柔らかくなっているのだろうか。
「……トモダチができた」
「えっ」
ポツリと呟くと、珍しく清さんが驚いた様子でこちらを見た。
なんだかこんな事でこんな反応をされる自分が恥ずかしくて、赤くなった顔を俯かせる。
俺の気持ちを察したのか、清さんは「それはよかった」と優しく微笑むだけで、それ以上は何も言ってはこなかった。
しかしこんな日常は、束の間の出来事に過ぎないのであった。
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