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陽だまり5

他校の人間に裕介が強引に連れて行かれたと、クラスメイトが騒いでいるのを聞いた。 「なんか如何にも不良って感じの集団だったぜっ?」 「あの制服、北高のだろ?ヤンキー確定じゃん」 「えー、あいつ何したんだよっ?」 無言で俺は教室を飛び出していた。 校門前まで来ると、北高の制服を着た連中が3人立っていて、俺を見るなり「ついて来い」と笑みを浮かべる。 やはり裕介が狙われた理由は、俺だったようだ。 北高の連中とは、何度かやり合ったことがある。 そのせいで目を付けられることは、以前なら特に気にもしていなかった。 しかしどこから知ったのか、俺と裕介が最近一緒にいることが多かったせいで、こんな…。 俺は促されるままに、北高の連中の後を付いて行くのだった。 廃墟となった工場。 この地域の不良の溜まり場だと有名なそこには、北高の連中だったりが大勢いる。 そこに俺が足を踏み入れるのと、地面に倒れ込んだ裕介が腹を蹴られたのは同時だった。 「ぁぐ…ッッ」 「お、スゲー、肉が足にめり込むんだけど」 「は?なにそれヤバ」 ゲラゲラと笑う連中に、ブワッと頭に血が上るのが分かった。 その場で立ち止まっていると、俺を連れてきたやつに背中を押される。 「谷口さん。連れてきました」 「おう。……って、え、マジ?」 俺を見るなり唖然とした男は、先程裕介を蹴り飛ばしたやつだった。 他の連中も、こちらを見て驚いたり面白がったりし始める。 「嘘だろ?なんだよ、めっちゃ可愛い顔してんじゃねぇか。お前ら、マジでこの子にボコられたのかよ」 「なーなー。こんなデブ放っといて、俺らと遊ばね?一発ヤらせてくれたら、このデブ解放してあげるからさ」   こいつらは、どこまで人をコケにすれば気が済むのだろうか。 怒りで体が震えてくる。 「ん?どーした?怯えちゃった?」 俯く俺の顎を掴んだ谷口という男が、気持ちの悪い目で俺を見つめてくる。 ──正直もう、限界だった。

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