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陽だまり7
「ジイさん。真志喜、大丈夫そうか?」
「んー。頭を打たれたみたいだから、脳震盪を起こしたんだろう。意識が戻らないようなら、大きな病院に連れて行くのがいいんだが…」
「ん…」
ゆっくり目蓋を開けば、真っ白な天井があった。
そしてすぐ側から「お、起きたか」としわがれた声がする。
こてんと顔だけ横を向ければ、知った顔のジイさんと、心配そうにこちらを覗き込む凪さんがいた。
このジイさんにこの診察室ということは、自分は病院にいるのか。
ぼんやりする頭でそれだけは理解する。
起き上がろうとすると体が悲鳴を上げた。
慌てて凪さんが体を支えてくれる中、ジイさんは「これ。すぐ動こうとするな」とため息をつく。
「ほんと、お前さんは落ち着きがないなぁ。1ヶ月前にもバットで殴られたとかで面倒見てやったってのに」
「……すみません…」
「んー、まぁ暫くは安静にな。一晩入院して行くか?」
「……」
どう返したらいいのか分からず口籠もっていると、俺を支えてくれている凪さんが口を開いた。
「いや、俺の家に連れて行きます」
「…ぇ?」
「そうか。じゃあ頼むぞ。真志喜、あんまり無茶はするな。今回はお前さんの石頭に感謝するんだな」
「……」
揶揄うようでそうでないジイさんの言葉に、俺は小さく頷くことしか出来なかった。
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