58 / 208
陽だまり8
凪さんの家に向かう間、彼は俺に何も聞こうとはしなかった。
そして家に着くなり「手当てしてもらったけど、体、洗いたいだろ?」と風呂に入るよう促され、傷がしみるのを堪えながら体を洗った。
風呂から出れば、「ジイさんから貰っといた」と薬を塗り、ガーゼを貼り、包帯を巻いてくれる。
「はい、終わりっ」
「……すみません…」
なんと言っていいのか分からず弱々しく謝罪すると、彼は困ったように笑って「そこはありがとうだろ?」と俺の頭を撫でた。
「ご飯にしようか。作り置きだけど、用意があるから。米は炊いてあるし、真志喜が風呂入ってる間に用意しといたぞ」
「すみません…」
「だーかーらー」
「……ありがとう、ございます…」
凪さんは苦笑いを浮かべ、俺を椅子に座らせる。
そして台所から持ってきた料理を並べ、俺の向かいに腰を下ろした。
凪さんは清さんと同じように料理上手だ。
味も同じで、彼らの家の味なのだなと感じる。
「お前のとこに連絡はしといた。明日になったらちゃんと帰れよ」
「……はい」
また謝りそうになって口をつぐむと、凪さんは俺に微笑みかける。
「お前は子供なんだから、遠慮しないで甘えればいいんだよ」
さ、食べよーぜ。と手を合わせてから箸を手に取る凪さんを見つめ、やがて俯いた。
「……俺には、甘える資格なんてありません」
「え?」
ともだちにシェアしよう!