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陽だまり9

凪さんからの視線を感じる。 けれど俺は、なおも顔を上げることは出来なかった。 「俺は、異物なんです…。なのに周りに溶け込めた気になって…。俺は…」 たった1人の友だちを、傷つけてしまった。 「俺は…、最低の人間です…」 今更気づいた。 あの時裕介に対して怒りが沸かなかったのは、罪悪感からだったのだろう。 彼を巻き込んでしまったことに、俺は負い目を感じている。 裕介に怯えられるのも当たり前だ。 俺は、普通にはなれない異物なのだから。 「真志喜は、いい子だよ」 「…っ」 その言葉に、我に返った。 弾かれるように顔を上げると、優しく微笑んだ凪さんが俺を見つめている。 「俺は、ちゃんと知ってる。大丈夫。真志喜は異物なんかじゃない」 「……」 反論する言葉もなかった。 凪さんを見つめてたまま固まってしまう。 プツリ。 何かが切れる音がした。 途端、ぼろぼろと目から水滴が溢れ出した。 涙を流すことが久し過ぎて、初め何が起こったのか分からずに放心する。 熱い滴が次から次へと頬を伝う。 おさまることなく、ぼろぼろぼろぼろ。 その後俺は、ガキみたいに泣き続けた。 そんな俺を凪さんはただ優しく抱きしめてくれた。 ずっと抑え込んでいたものが解き放たれて、溢れ出す感情が怖くて、でも包み込んでくれる腕がそれら全てから守ってくれる。 散々泣き喚いた後に口に含んだご飯は、今まで感じたことがないくらい暖かくて、優しい味がした。

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