59 / 208
陽だまり9
凪さんからの視線を感じる。
けれど俺は、なおも顔を上げることは出来なかった。
「俺は、異物なんです…。なのに周りに溶け込めた気になって…。俺は…」
たった1人の友だちを、傷つけてしまった。
「俺は…、最低の人間です…」
今更気づいた。
あの時裕介に対して怒りが沸かなかったのは、罪悪感からだったのだろう。
彼を巻き込んでしまったことに、俺は負い目を感じている。
裕介に怯えられるのも当たり前だ。
俺は、普通にはなれない異物なのだから。
「真志喜は、いい子だよ」
「…っ」
その言葉に、我に返った。
弾かれるように顔を上げると、優しく微笑んだ凪さんが俺を見つめている。
「俺は、ちゃんと知ってる。大丈夫。真志喜は異物なんかじゃない」
「……」
反論する言葉もなかった。
凪さんを見つめてたまま固まってしまう。
プツリ。
何かが切れる音がした。
途端、ぼろぼろと目から水滴が溢れ出した。
涙を流すことが久し過ぎて、初め何が起こったのか分からずに放心する。
熱い滴が次から次へと頬を伝う。
おさまることなく、ぼろぼろぼろぼろ。
その後俺は、ガキみたいに泣き続けた。
そんな俺を凪さんはただ優しく抱きしめてくれた。
ずっと抑え込んでいたものが解き放たれて、溢れ出す感情が怖くて、でも包み込んでくれる腕がそれら全てから守ってくれる。
散々泣き喚いた後に口に含んだご飯は、今まで感じたことがないくらい暖かくて、優しい味がした。
ともだちにシェアしよう!