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守りたいもの2
俺の制止も聞かずに、男たちが鉄扉へと手を伸ばす。
嫌だ。待って。待ってくれ。
俺なんかだったら、どんなことしたって構わないから。
もともと塵の様に扱われるのは慣れている。
生まれた時から、俺の生き方は人間以下だった。
好きなように体を使われ、いつ死ぬかも分からない生活。
本当はもう、俺は死んでいるはずだった。
誰の救いも期待できない。
体が寒い。
意識が遠のく。
そんな時、ひとつの小さな手が、俺の前に差し出された。
死ぬはずだった。
何もかもがそこで終わるはずだった。
それなのにあいつは……
迅は生きろと、俺に言った。
「…っ」
違和感を感じて我に返る。
何やら倉庫の入り口が、騒がしい。
そして現れた人物に、俺は瞠目する。
「すみませんね。ここにウチの真志喜がいるはずなんですが」
いつもの笑みとは全く別物の、ひどく殺気を帯びた瞳。
圧倒的な存在感を持った日南組本部長、日南迅は、地を這うような低い声で言い放つ。
「テメェら。覚悟は、できてんだろうな…?」
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