62 / 208

守りたいもの3

動揺する男たちの隙をついて、一気に拘束から抜け出す。 その時には周りは一斉に騒がしくなっていた。 柳田組の連中を、日南組の若衆や舎弟らが鎮圧しにかかる。 そんな中、再び俺を取り押さえようとする相手に身構えた。 しかし俺が動くより先に横からの蹴りが男の腹にめり込む。 「真志喜くん、大丈夫?」 「っ、西倉さん…」 その顔つきはマイちゃんといる時とは別物の、日南組幹部としての西倉さんがいた。 彼は困ったような笑みを浮かべ、「まったく無茶をする…」と息を吐く。 「若頭と迅坊っちゃんが、急遽人を集めてね。真志喜くん、携帯に迅坊っちゃんが付けたGPSがあるでしょ」 「え。あぁ…」 「その場所がこんな港の倉庫街だから、何かあると踏んでね。大人数で来て正解だった」 そう言って俺の頭を撫でた西倉さんは、顔を上げ、優しげだった表情を鋭いものへと変化させる。 「あとは任せて、真志喜くんは安全なところへ」 「っ、そんな、俺も一緒に…っ」 「真志喜」 声がしたと同時に、背後から抱きしめられた。 振り返れば至近距離に迅がいて、ジッと見つめ返される。 「無事でよかった…。って、そんなに無事でもないか。こんなに傷だらけで…」 「こんなのどうってこと…。あっ、おい迅!凪さん…っ、凪さんが鉄扉の向こうに…!頭を殴られて…っ、早く病院…!」 「分かった。分かったから落ち着いて。真志喜はこのまま外に出るんだ」 「ふざけんな!そんなこと出来るわけ…!」 反論しようとしたが、首の側面に衝撃があり視界がぐらつく。 意識が遠のく中、俺に手刀を叩き込んだ迅を睨みつけた。 「テメェ…、ぜってぇぶっ殺す…」 「こんなのにも反応できないやつに、言われたくないな」 気絶した真志喜の体を受け止め横抱きにした迅は、西倉にアイコンタクトを送り外へ向かった。

ともだちにシェアしよう!