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守りたいもの4

それから柳田組が鎮圧されるのは時間の問題だった。 凪と真志喜は病院へ送られ、正嗣はその場に留まる一方で、迅は一旦本邸へと引き返す。 早足に奥の部屋へと向かい襖を開けると、そこには己の父であり日南組組長である日南鉄心(てっしん)が座っていた。 今は年齢的なこともあり、組の全般は正嗣や迅に任せてはいるが、全盛期には相当名を馳せた人物だ。 日南組をここまで大きくしたのも鉄心の働き故のこと。 その存在は今も多くの者たちに恐れられている。 鉄心はやって来た迅を見るなり不機嫌そうに眉を寄せた。 そしてクイクイと手招きをする。 それに対して一度嫌そうに顔をしかめた迅だったが、次には折れて鉄心の前に歩み寄り膝をついた。 すると次にはドスッとなかなかの威力で頭に手刀を叩き込まれる。 「この(たわ)けが。お前が真志喜ちゃんを守らんでどうする」 「…あぁ」 「怪我の具合はどうなんだ?じぃじに会いたいと泣いてはおらんか?」 「特に大きな怪我はないし、親父に会いたいって泣いてもいないよ」 強大な組織のボスが、蓋を開ければ息子(真志喜限定)を溺愛する親バカだ。 これには迅も溜息が漏れる。 迅の報告に鉄心は安心しながらも気落ちした様子を見せたが(会いたいと求めて欲しかったのだろう)、次には表情を厳格なものへと変化させた。 「柳田組とは、前々から話をつけようと思っとった。そんな中で、こうも堂々と(けしか)けられては黙ってられん」 立ち上がった鉄心は、「行くぞ」と迅に声をかけ歩き出す。 迅は頷き、その後に続いて部屋を出て行った。

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