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守りたいもの6
ひどく取り乱した様子で、急いでここに来たのだろう汗だくな真志喜は、次にはクシャっと顔を歪め俯く。
「俺…、俺…っ」
この人を守ると決意したのに。
自分がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。
「すみませんでした…!俺がグズだから、凪さんに怪我させて…っ。俺のせいで…、こんな…っ」
みっともなく涙が溢れてくる。
凪さんのこととなると、俺はひどく泣き虫だ。
情けない。
こんな、恩を仇で返すようなことをして…。
「真志喜」
深々と下げていた頭の上から、名を呼ばれた。
おずおずと顔を上げると、優しく微笑む凪さんが俺を見つめている。
頭に巻かれた包帯が、ひどく痛々しい。
「お前は悪くない。寧ろありがとうな。真志喜のおかげで、俺は救われた」
「っ、そんな…っ」
「本当のことだ。そんなボロボロになって、俺を守ってくれたんだろ?」
「…っ」
「だから、ありがとう。真志喜」
手招きされて近寄れば、そっと頭を撫でられた。
そうしたらまた、子供みたいにボロボロと涙が出てくる。
そんな真志喜の姿に周りが温かい目を向ける中、
迅は1人、複雑な表情を浮かべるのだった。
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