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守りたいもの8
「真志喜はさ。凪さんのことが好きなの?」
「……は?」
唐突な質問に、今までの空気感も忘れて真志喜が顔を上げる。
迅は何か思い詰めたような顔をして見下ろしてくる。
少しの間睨めっこのようなことを続けた後、真志喜はこてんと首を傾げた。
「ンなもん、好きに決まってんだろ」
「……それはやっぱり、恋愛感情という意味で…?」
「はぁっ?」
モニョモニョと何を言っているのだこいつは。
何やら勘違いしてる迅に、真志喜はため息を吐く。
それだけで迅はビクッと体を揺らした。
「ちげーよ。なんですぐそっちと結びつけんだ」
「え?そうなの?」
「当たり前だろ。好きの区別くらい、俺だってちゃんとする」
「…ふふ」
「? どうした?凪」
不意に笑った凪に、病室に残っていた清と正嗣は首を傾げる。
そんな中、凪はかつてのことを思い出していた。
あの日。
倒れた真志喜を連れて病院へ行き、目覚めるのを待っていた時、凪は早めに迅に連絡を取っていた。
「目が覚めたら、そっちに帰らせようか?」
そう凪が尋ねれば、少しの間をあけ『いいえ』と返される。
『真志喜としては、今はあなたのところにいた方が気持ちが楽なはずです。なので、凪さんのところに居させてあげてくれませんか』
本当は一刻も早く会いたかっただろうに。
どこか悔しそうな声で、迅はそう頼み込んできた。
「ほんと、あいつらって不器用だよなぁ…」
誰よりも互いを求めてるくせに、下手に遠回りして、すれ違って…。
でも驚くほどに繋がりあっている。
いつかちゃんと、分かり合える時がくればいい。
そう願って、凪は笑みを深めた。
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