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潜入
「へぇ、お姉さんたち美容師なのー?何処の美容室?俺今度会いに行っちゃおうかなーっ」
真志喜はただいま、絶賛ナンパ中である。
一仕事終え、「送ります!」とやって来た若衆の榎本を引きずって街へくり出し、見かけた綺麗なお姉さんとキャッキャしている真っ最中だ。
一方榎本は呆れるほど純真で、俺がデレデレしている横でカチカチに固まってしまっている。
せっかく連れてきてやったのに、使えないやつだ。
「ねね、これから何処行くの?え、ご飯?いいなぁ、俺も一緒に連れてってよ」
「あ、あの、真志喜さん…」
「なんだよ。邪魔すんな」
「いや、でも…」
控えめに声をかけられ不機嫌になりながら顔を向け固まる。
そこには相変わらずいけ好かない笑みを浮かべた迅が立っていた。
「な、なんでお前……っうわ!」
言い切る前にあろうことか小脇に抱えられ驚愕する。
その間にも迅は「すみません、コイツ借りていきます」とお姉さんたちに笑いかけ、彼女たちをすっかりメロメロにさせているときた。
この道化野郎…っ。
見せかけの甘いマスクでお姉さんたちを誑《たぶら》かしやがって…!
童顔な俺にはできない芸当をサラッとやってのけるとか、死ぬほど腹立つ!
「離せこんにゃろう!なんでここにいんだよ!」
「榎本に居場所教えてもらったから」
「は!?おい榎本!」
「す、すみません…!」
どうせ迅が脅迫まがいの聞き方をしたのだろう。
部下に対して何を脅しとるんだこいつは。
気づけば車の助手席に放り込まれ、扉を閉められる。
榎本は逃げるように退散していった。
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