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潜入2
一緒に車に乗ればいいのに、榎本は俺といることが多いせいか、迅に色々と圧をかけられることが多く怯えている節がある。
運転席に座りシートベルトを付ける迅をジト目で見ながら、俺は眉を寄せた。
「お前、いい加減榎本怯えさせんの止めろよ。本部長としてどうなんだ?」
「…真志喜が本部長補佐になってくれればいいのに。そうすればもっと一緒にいられる」
「おい、話をはぐらかすな」
咎めると、迅は拗ねたように唇を尖らせた。
その顔が子供みたいで、ついつい笑いそうになるのを必死で堪える。
「で、なんだよ。わざわざ本部長さんが俺に会いに来るなんて」
本題に入ると、車を発進させた迅は拗ね顔のまま口を開いた。
「真志喜に頼みがあるんだ」
「……またデスク仕事じゃないだろうな」
「違うよ。俺もあんまり、今回のことは気乗りしないんだけどね」
「?」
歯切れの悪い物言いに首を傾げると、迅は苦笑いをこぼし「詳しくは本邸に着いてから話すよ」とはぐらかされてしまった。
「おー、真志喜ちゃんお帰りなさい。お菓子食うか?甘い羊羹があるぞ〜」
「じぃじ久しぶり。今お腹空いてないから大丈夫」
「そうかそうか。また食べたくなったらじぃじの部屋においでな〜」
この光景を見るたびに周りが戸惑っているのが分かる。
なんでも本来のじぃじは酷く恐ろしい人のようで、こんなにも甘々なのは俺に対してだけだと聞いた。
俺はもとよりこういう扱いしかされてないからよく分からないけど、もう息子というか孫のように愛でられている感じだ。
「じゃあじぃじはちょっと出かけてくるから、またな真志喜ちゃん」
「うん。気をつけてね」
こちらも自然と孫のような接し方になってしまうのだが、じぃじ(もう呼び方からしてそうだ)は嬉しそうに廊下を歩いていった。
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