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潜入3

「あぁ、迅、真志喜、お帰りなさい」 「「ただいま」」 迅に連れられてやって来た部屋には正嗣と清さんがいた。 正嗣に「まぁ座れよ」と促され2人の向かい側に腰を下ろすと、未だに晴れない顔をした迅も(かたわら)に座る。 「いきなり呼び出してなんなんだよ。もうちょっとで成功しそうだったのに…」 堪らず愚痴をこぼすと、清さんがにこりと微笑みを浮かべる。 「成功とは、何に成功しそうだったんですか?真志喜」 「……イエ、なんでも…」 ものを言わせぬ威圧感に俺はあっさり黙り込む。 すると正嗣が何やら紙を取り出し机に置いた。 それは何処かの店のチラシのようだ。 黒や紫やピンクを基調とした、繁華街っぽいデザインになっている。 「なんでも愛らしい男の子たちが、おじさんたちの酒のお供をしてくれるんだと。店名は【ラピス・ブルー】」 「へー…、そんな店があるのか…」 「おい。なに満更でもないみたいな顔してんだ」 正嗣の説明に、悪くないな…と思ってしまっていた俺はわざとらしく咳払いする。 うん。正面に座る清さんの、まるでゴミ屑でも見るような視線が痛い。 「で、この店がなんだよ」 「んー…。まぁ言っちゃえばその店、日南組が経営に加担しているらしい…。親父が言ってた」 「えっ」 知らなかった。 要するにこの店はウチのシマに存在しているのだろう。 なんで把握できていなかったのかと首を傾げると、清さんが淹れてくれたお茶を俺と迅の前に置く。 「なんでも、そこの店長さんが気の強い方みたいですよ」 「気の強い…?」 「『経営に口出し無用。お前らは引っ込んでろ』というスタンスらしいです」 「はぁ?なんだその強気発言。一発かましてやった方がいいんじゃねぇのかっ?」

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