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潜入6
「バカ野郎!テメェ可愛い舐めんじゃねぇ!可愛いってのは、彼方さんみたいな人たちのことを言うんだよ!」
「おい、何キレてんだよ真志喜…」
「こいつが可愛いを侮辱したからだ!」
「まったく…、自分を過小評価し過ぎですね」
何故か呆れられている気がするのを無視して、俺はそっぽを向いた。
とにかく、俺にそんな頼みが聞けるわけない。
「でもよ真志喜。もしオッケーが出れば、可愛い子たちに囲まれて調査できるんだぞ?」
ぴくっ。
正嗣の言葉に、真志喜が動きを止めた。
「ほう。ここが【ラピス・ブルー】かぁ」
コンクリートで建てられた1つのビルの前で、真志喜は興味津々に看板を眺める。
あれからまんまと正嗣の口車に乗せられて調査をしにいくことになった真志喜は、店長の桐崎が指定した時刻に【ラピス・ブルー】へやって来た。
その横に立っていた迅が、相変わらず浮かない顔で真志喜に問いかける。
「本当に行くの?」
「はぁ?お前が頼んできたんだろーが」
「それは、そうだけど…」
口ごもる迅にため息を吐いた真志喜は、その背中をバシンと叩いて胸を張る。
「今更どーってことねぇよ、こんなもん。お前はいらん心配し過ぎ」
「……」
「じゃーな。こっからは一人でいいから」
黙り込む迅を置いて、俺はビルの中へと入った。
立っていた大柄の男は、俺を見るなり「こちらへ」と歩き出す。
スーツ姿でガタイがいいから、まるでSPのような男に苦笑いが漏れた。
まずは第一関門。
桐崎さんに、【ラピス・ブルー】を調査する許可を得るところからだ。
こちとらダメだと言われても、意地でも入り浸る覚悟はできている。
そう…。なんとしてでも俺は認められて、可愛い男の子たちに囲まれるパラダイスを満喫しなければならないのだから!
強い信念を持って、俺は身なりを整え姿勢を正し、男の後に続くのだった。
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