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潜入8

これは、ツッコむところなのだろうか…? でも桐崎さん目がマジだし、手つきには色気が微塵もない。 なんというか、確認しているような触り方だ。 「はい、いいわ。あなた合格よ」 「…へ?」 「早速制服を着て頂戴。松川」 「はい」 テキパキと後ろにいた男に声をかければ、そいつは一度どこかに消えて、次にはここの店の制服一式を持ってくる。 あまりにもポンポン話が進んで、俺は困惑状態だ。 「あ、あの。なんで制服なんか…?」 「あなたにはここで働いてもらいます」 「え。……え!?」 「ここにいる以上、働くことが最低条件です。調査のために来ていることは、くれぐれも他のボーイには言わないこと」 「なんで、って…。まさか、この事件のこと言ってないんですかっ?」 「そんなわけないでしょ。万全の注意をはらうよう徹底してるわよ」 なら何故隠す必要があるのだろうか。 その疑問を問う前に、桐崎さんが口を開く。 「私はね。今回の事件、彼らボーイの中に犯人がいると踏んでいるのよ」 その言葉に瞠目する。 確信にも近い発言に、その根拠を問うた。 すると彼女は、再び椅子へと腰を下ろす。 「ここでの順位争いは、かなり激しいものよ。毎回No. 1のボーイが狙われているのなら、他のボーイがそれを妬んで犯行を企てた可能性は十分にあるわ」 「…まぁ、可能性がある以上は、下手に調査をしてるとバレて警戒されても厄介ですが…。…あの、そこまで断言するのは…」 「女の勘よ」 「……左様ですか」 流石にその可能性一択で調べることはできないが、それも踏まえて調査に挑んだ方がよさそうだ。 そのためにも、自分はあくまで新人としてここに入る。 要はそういうことなのだろう。 「分かりました。ではその方向で、やらせてもらいますっ」 「ええ。…というかあなた、いつまで全裸でいる気?」 「…あ」

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