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ボーイデビュー2
おぉ、随分と威勢がいいなー。
王女様キャラか。うん、堪らん。
基本可愛いは許されるスタンスの真志喜は、相手の刺々しい態度に構わずにやけ顔を浮かべる。
「いやぁお綺麗ですねぇ〜。お名前を聞いてもいいですかっ?」
「……リン、だ」
「リン…!ステキな名前ですねぇ。まさに名が体を表している…!」
「……」
すっかり真志喜の様子に、リンは「おかしなやつ…」と汗を流す。
殆ど引き気味のリンに対して、なおもアタックする真志喜。
その様子を見た周りは動揺せざるを得ないのであった。
ボーイの仕事というのは、実際に接客しながら覚えていくという感じらしく、入ってすぐに客がつくことになった。
名刺を渡して自己紹介し、取り敢えず酒を作って客に差し出す。
相手は高そうなスーツ姿の男性で、歳は30代だろうか。
見た目も悪くなく、紳士的な様子で俺に笑いかけてくる。
「君、新人さんなんだよね?今日が初めて?」
その質問に、真志喜はにこりと微笑み「はい」と答える。
営業スマイルは得意分野だ。
伊達にヤクザのおっさんたちと付き合っていない。
優しく笑いかける真志喜に、相手は一瞬で魅了された。
うっとりと真志喜を見つめ、頬を上気させる。
「すごく可愛いね。マキちゃん、だっけ。是非連絡先を交換しよう」
「はい。喜んで」
連絡先といっても自身の携帯ではなく、別に用意したもので交換をする。
すると徐に相手の手が腰に回された。
ここでは多少のお触りはオッケーらしく、大胆な子だと自分から抱きついたりしているみたいだ。
はぁ。早々にダリー…。
こんな可愛くもない男に触られてもな…。
そう心の中で呟き、ため息を吐きたいのをなんとか我慢する。
差し出された酒を笑顔で受け取り、真志喜は内心うんざりするのだった。
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