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ボーイデビュー5

「じゃあまたねマキくん」 「はい。お待ちしてます」 帰る男性を見送る。 ここに入ってから1週間。 だんだん環境にも馴染めてきて、他の子たちとも親しくなり始めていた。 今のところ、気になるような客はいないし、怪しい行動をしているボーイの子もいない。 相変わらずNo. 1はリンさんのままなのだが、何故か困ったことに俺の順位が上がり始めている。 指名される回数も増えて色々と不都合があるため、桐崎さんに順位は固定してもらえないかとお願いしたのだが… 「それとこれとは別よ」 と断られてしまい、逆に正式にここで働かないかとまで言われてしまった。 ほんとに勘弁してほしい…。 何が楽しくておっさんたちとキャッキャしなければいけないんだ。 そう内心ため息を吐き、待機室へと向かおうとした俺は、次に店に入って来た人物たちに瞠目した。 「マキくん。指名入ったよ」 「……」 無表情でテーブルへ向かい、真志喜は路上に落ちているウ○コでも見るような目で彼らを見下ろした。 「テメェら、こんなとこで何してやがる」 ひどく冷め切った声音に丁度通りがかったボーイの子がギョッとした顔で振り返るが、なおも真志喜の軽蔑するような目つきは変わらない。 その一方で、すっかり真志喜の蔑みに慣れ切っている2人はヘラヘラと笑みを浮かべていた。 「その格好、すごい似合ってるね。“マキくん”」 「頑張ってるみてぇじゃん。まさかお前がこんな…、ブハッ」 「……今すぐ帰れ。でないとそのクソムカつく面をぶっ潰してやる」 血管を浮き立たせ、目の奥にメラメラと怒りの炎を灯らせる真志喜。 それに彼ら、正嗣と迅は本気の気配を嗅ぎ取って流石に「悪かったって。揶揄い過ぎた」と謝罪するのだった。

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