93 / 208

存在意義5

「多分リンさんも、同じ気持ちなのかな」 「え?」 「リンさんって、人気に対する執着心があるでしょ。その理由って、僕と似たようなものが根本にあるのかなって」 答えようがなくて口をつぐむ真志喜から視線を逸らし、ハズキは顔を俯かせる。 「きっと彼は、寂しいんだよ」 儚いその姿は、今にも消えてしまいそうだ。 かつて、俺に差し伸べられた小さな手が、ふと頭を過ぎる。 母さんもいなくなり、自分の存在意義を失った俺を、真っ直ぐなその瞳は見つめていた。 素直に綺麗だと感じた。 俺にはない輝きを、あいつの瞳は持っているのだ。 だから今、わざわざそれをガラクタの眼鏡で隠そうとする迅に腹が立つ。 そして無性に、あの瞳が見たくなる時がある。 するとその時、不意に携帯の着信音が聞こえた。 俺の携帯のようで確認すると、迅からのメッセージで 《凪さんのとこ、あんまり長居しないようにね》 と書かれている。 またGPSで調べたのか。それとも…。 なんだか変な気分になってカフェラテをグビッと飲み込む。 凪さんのカフェラテは、ほろ苦くて優しい味がした。

ともだちにシェアしよう!