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存在意義6
人気のない夜道を、リンは1人歩いていた。
今日は景気の良い客がいて、それなりの額を落としていった。
これなら今月の順位もNo. 1を維持できるだろう。
ただマキという新人のボーイは少々気がかりだった。
入ってきて早々に順位を上げてきている。
気を抜いているとNo. 1を奪われかねない。
やっと手に入れることができたこの場所を、なんとしてでも死守したい。
自分の中の何がそこまでの執着心を持たせるのか、リン自身よく分からなかった。
その時。
「っ…!?」
強く腕を引かれた。
抵抗する暇もなく路地裏へと引き摺り込まれ、口を塞がれる。
羽交い締めにされ、暴れても逃れられない。
相手はガタイのいい男のようだった。
「へぇ。今回の子もべっぴんさんじゃねぇか」
「前の子は可愛い系だったけど、今回は綺麗系だな。俺、こっちのがタイプかも」
いつの間にか男が増えていて、全員で5人だろうか。
その卑猥な目付きにリンは怖気が立った。
しかし抵抗しても、拘束が解かれることはない。
「へへっ。たっぷり可愛がってやるからなぁ?リーンちゃん」
「!?」
何故名前を。
そう思ったが、尋ねる暇はない。
伸ばされた手がリンの服を掴む。
塞がれた口でくぐもった声を上げるリンに、目の前の男は舌舐めずりをした。
しかしその直後、リンの視界から男が消えた。
わけが分からず固まったリンは、聞こえた呻き声で我に返る。
見れば先程の男が壁に身を打ちつけたのか、苦しげに地面で蹲っていた。
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