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存在意義7

その後間髪おかずに背後の男が呻き声を上げ、拘束を解く。 咄嗟に距離を取ったリンが壁側に身を寄せると、目の前に小さな背中が現れた。 守るように自分の前に立ち塞がった人物に、リンは瞠目する。 「お前…」 「リンさん。怪我はないですか」 振り返る真志喜を、リンは凝視していた。 一体、何が起こっているんだ。 まったく理解が追いつかない。 俺が男たちに襲われて、マキがそれを助け出した? 見るからに小柄なこの男が? 「リンさん。なんで1人でなんて出歩いてたんですか。桐崎さんから注意はするように言われていたでしょう」 「っ、それは…。…呼び出されたんだ。話があるから、1人で来いって」 「それにわざわざ従ったと。弱みでも握られてたんですか」 「……」 言われて口をつぐむ。 図星だった。 相手は俺が親に黙って【ブルー・ラピス】で働いていることを知っていたのだ。 そして親にそのことを連絡できる手段も持ち合わせているときた。 もしあの両親にそれがバレれば、きっとあの2人のことだ、何がなんでも辞めさせようとするだろう。 そんなことはまっぴらだ。 俺は【ブルー・ラピス】を辞めるつもりは毛頭ない。 真志喜はもう、誰に脅されたとは聞かなかった。 リンから顔を逸らし、暗闇に紛れている人物を静かに見据える。 「今までもこうやって襲わせていたのか?ハズキくん」

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