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前触れ
何かに包まれている温かさに身を委ねる。
心地いい眠りの中にいた真志喜は、やがてゆっくりと目蓋を開いた。
窓から差し込む日の光に眉をひそめる。
まだ覚醒しきっていない意識の中で、真志喜は敢えて視線を逸らしていた目の前の人物を見た。
腕の中に真志喜をすっぽりと収め、心地よさそうに眠る迅をジト目で見つめる。
ピッタリとくっ付いた体から感じる引き締まった筋肉に舌打ちをこぼした。
まったく、人間というものはとことん不平等だ。
「…ん。真志喜、起きた…?」
「この状態で俺が寝ていると思うか」
「ふふ、おはよう。相変わらず寝起きも可愛いね。天使みたいだ」
そんな巫山戯たことを言いながら、チュッと甘えるようにキスをしてくる。
「っ、も…やだ…」
「んー。真志喜かわいぃ」
チュッチュと至る所に口付けてくる迅。
一見恋人同士の甘いやり取りに見えるその行為だが…。
「やだ、って…言ってんだろーが!!」
「ぅぐ…っ!」
堪忍袋の切れた真志喜が容赦なく迅を蹴り飛ばす。
照れ隠しなのか、本気で嫌だったのか。
散々真志喜に蹴り飛ばされている迅にはその判断がついた。
今のは、本気で嫌がってる方デシタ。
フンッと鼻を鳴らして布団から出た真志喜は、自分が素っ裸であることに気付いて眉を寄せる。
「おい、なんで裸なんだ。しかもなんで俺の布団にお前がいる」
「……やっぱ、記憶ないですよね」
「はぁ?」
真志喜は基本酔っていた時の記憶はなくなっている。
予想はしていた迅だが、あの時の記憶を共有できないのは少し残念だ。
さっさと服を着て部屋を出て行ってしまう真志喜。
迅も同様に着替えるが、テーブルに置かれた眼鏡の残骸が視界に入り、1人ため息を吐いた。
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