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前触れ3
睨み付ければ相変わらずのヘラヘラとした笑みを返される。
ウゼェ…、マジでウゼェ…ッ。
「ん。つーかお前、眼鏡どうしたよ」
「……不慮の事故で、帰らぬものになってしまったんだ」
「はぁ?何おかしなこと言ってんだ?」
遠い目をして答える迅を真志喜が不審そうに見つめていると、襖が開いて正嗣と彼方がやって来た。
2人は俺たちを見るなり「「あ」」と息ピッタリに足を止める。
そして正嗣はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべ出し、彼方さんは顔を赤らめて俯いてしまった。
恥じらう姿も可愛らしい。
「よぉ、昨日はお楽しみだったか?お二人さん」
「お楽しみって何がだよ」
「それはもう、骨の髄まで味わい尽くしました」
「は?お前まで何言ってんだ?」
「おい真志喜。その首元のやつ、ちゃんと隠しといた方がいいぜ?」
「っ、ちょっと正嗣さん…!」
「首、元…?」
わけが分からず首を傾げていた真志喜は、途端にピコーンと頭の上で電球が光った。
同じ布団で眠っていた迅…。
そのどちらともが素っ裸…。
呆れたように注意してきた清さん…。
ソワソワしてる周りの連中…。
ポク…ポク…ポク……チーン。
「ッ…迅、テメェ…!!」
「ま、待って待って…!これは真志喜からのお誘いで…!」
何やら言い訳しているが問答無用!
殴り飛ばそうと拳を振り上げた俺だが、いつの間にか背後にいた清さんに手首を掴まれた。
「これ以上騒がしくすると、朝食は抜きですよ」
「……スミマセンデシタ」
絶対零度の瞳に見下ろされ、俺は大人しくちょこんと正座する。
すると隣で迅のやつがプッと吹き出しやがったので、思いっ切り太腿をつねってやるのだった。
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