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前触れ5

「彼方を送ってくれるなら気をつけてやってくれ」 出かける前、俺と迅を呼び止めてそう言った正嗣を思い出す。 「気をつけるって、何を?」 「いや、な…。なんというか、あいつの体質なのか分かんねぇんだけど…。彼方って、やたらと絡まれやすいんだよ…」 「はぁ?」 なんだその体質は。とその時は聞き流していた。 まぁ彼方さん可愛らしいし、ナンパされることがあるのだろう。 それを過保護の正嗣が一々神経質に考えているのだろうな。 そう軽く考えていたのに…。 「ねぇ、かわい子ちゃん。俺たちと遊ばない?」 「へ、いや、その、お、おお俺は…っ」 「いいでしょ?ね。お金とか払うからさ」 絡まれてるー…っ。 思いっ切り絡まれてるよ…! 今時「かわい子ちゃん」とか言うヤツ初めて見たよ…! しかも見るからにヤンキー…! 典型的な絡まれている図…! 男たちに囲まれてあわあわしている彼方さんのもとへ、真志喜は駆け出した。 そしてなりふり構わず「どりゃー!」と男の1人に飛び蹴りを喰らわす。 「うわっ、なんだコイツ!?」 「いきなり何すんだよ!?」 「うっせーチンピラ!彼方さんに近寄んなー!」 「真志喜やめてー。事を大きくしないでー」 もう1人も殴り飛ばそうとした俺を、迅が背後から羽交い締めにしてくる。 「ぎゃー!変態に捕まったー!」 「真志喜、だから事を大きくしないでって…。あのチンピラの方々、今のうちに逃げてください」 「へ?あ、…はい」 「失礼します…」 「待てゴラァアア!!」

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