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前触れ8
「で、でも…!」
「いいじゃねぇか。自分の力でなんとかしたいって思いは大切だと思うぜ」
「凪さん…!」
「ここまで覚悟決めたんだろ?というか、安全のために護身術を身につけといて損はないはずだ」
「ん、んん…」
どんな事でも凪から言われると、真志喜に反論の余地はなくなる。
「でも護身術って習い事でもするのか?彼方、和菓子屋忙しいだろ」
「はい、そこが問題で…。今いろいろと、都合に合いそうな場所を探してはいるんですが…」
なかなか見つからないらしく落ち込む彼方。
そんな中、凪が「じゃあさ」と口を開いた。
「真志喜に教えてもらえばいいんじゃね?2人って体格似てるし、参考になるんじゃねぇか?」
「え、俺ですか?」
凪に指名されて満更でもなさそうな真志喜だったが、すぐに他3名からの反論が飛ぶ。
「やめとけやめとけ。こいつのは自己流で、型がどうこうとか一切ねぇから」
「とにかく学生時代に喧嘩しまくってた時に身に付けたものだからね。実践的過ぎるし、護身術とは呼べないよ。それに真志喜の力は体格どうこうの次元を超えてるから」
「何より真志喜が指導に向きません。大方、稽古ということに託 けて過剰なボディータッチされるのがオチですよ」
「あー、まぁそれもそうだな」
「な、凪さんまで…!」
何故かダメージを受けることなっている真志喜が打ちひしがれている中、自信満々に正嗣が「なんなら俺にしとけよ!」と名乗りを挙げる。
しかし次には清からの鋭い視線にギクリと体を硬らせた。
「若 頭 はお仕事の方がありますから」
「……ハイ」
有無を言わせぬ威圧感に、正嗣も真志喜同様に打ちひしがれる。
そんな中、迅が思い至ったように「そうだ」と声を上げた。
「西倉さんに頼んでみたら?あの人教えるのとか上手だし、護身術とかの技術があったと思うよ」
「あー西倉パパ!その手があったか!」
武道にも優れている西倉ならまさに適任だとみんなが納得する。
彼方は嬉しそうに何度も頭を下げるのだった。
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