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前触れ11
全裸の真志喜の登場にいち早く反応したのは迅であった。
すぐさま己の座っていた座布団で真志喜の股間を隠す。
「真志喜、早く服着て…!」
「あ?なんだよ、減るもんじゃあるまいし」
「減るんだよ、俺の理性が…」
「知るかよンなもん。つーか俺は、そこの変態野郎に用があるんだ…ッ」
目をつり上げビシッと丸出しの尻を指差す真志喜。
迅も迅で、蔑むような目付きでその相手を見つめた。
その途端。
まるで見えない糸に引き上げられるようにスクッと立ち上がった全裸男が、ヘラヘラと笑みを浮かべる。
「いやぁ〜。相変わらずの熱烈な蹴りだったねぇ〜。流石は俺の真志喜ちゃんっ」
「ッ…、だからッ、その“俺の”ってやつ止めろよ!」
キーキー怒る真志喜に笑いかける相手は、顔だけ見れば白馬にでも跨っていそうな甘いマスクだ。
白く染められた髪はまったく痛んでいるようには見えず、サラサラのストレート。
何も言わずに微笑んでいれば、大抵の女性はイチコロだろう。
まぁ今は真志喜に蹴り飛ばされたことで鼻血を流し、酷く間抜けな面をしているのだが。
しかも中身の方に難がある。
それはそれはかなりの難が…。
そんな彼のお気に入り認定された真志喜は周りからそれは同情された。
迅の場合は人事にできないので、同情する余裕などありはしない。
「…相変わらずの変人っぷりですね、冬 馬 さん」
迅の言葉に顔を向けた冬馬は、屈託のない、どこか不気味な笑みを浮かべた。
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