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前触れ14
「真志喜。やっぱり親父たちに話すべきだよ」
「話してどうする。つーかお前、なんで俺の家に来んだよッ」
「真志喜が本邸で寝ないって言うからでしょ」
「答えになってねーしッ」
帰路を辿りながら、説得してこようとする迅にそっぽを向く。
あれから冬馬からの情報を、俺はじぃじや正嗣たちに話そうとはしなかった。
反対する迅にも口止めをして、いつも通りに過ごしている。
いや、いつも通りではないか。
迅のやつがいつも以上にくっ付いてくるから、鬱陶しくてしかたない。
「下手に事を大きくしたくない。実際シマが荒らされたって言う報告も来てねーんだし、話したところでだろ」
「そんな悠長な」
「やなんだよ!気を遣われるの!」
「それは…」
「酷いですよふたりともー!」
反論しようとした迅の言葉を遮ったのは榎本だった。
会話を邪魔された迅は後ろから駆けてくる相手に鋭い視線を向け、相変わらずの扱いに榎本がヒィッと怯える。
それに俺は「おい」と迅の頭を叩いた。
「だから榎本怯えさせんなって言ってんだろ」
「真志喜。話は終わってないからね」
「…ッチ」
「お、おふたりとも…っ、先に帰っちゃうから驚きましたよ!俺送迎しますって言ったじゃないですか!車向こうに停めてありますよ!」
どうやら榎本に迷惑をかけてしまったらしい。
変な空気になってしまったし、このまま榎本と行ってしまおうか。
そう考えていると、不意に背後から声をかけられた。
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