131 / 208

前触れ15

「日南組の真志喜だな?」 「…はい?」 振り返れば、スーツ姿の見知らぬ男が立っていた。 強面な顔といいガタイのいい体といい、何か嫌な予感はする。 今はすっかり辺りも暗くなり、この道はちょうど人通りも少ない。 一瞬辺りが静まり返った。 「一緒に来てもらう。拒否権はない」 無表情の相手は、抑揚のない声でそう言い放つ。 その言葉に、辺りは更に張り詰めた空気に変化したのが分かった。 なので俺は、俺に対して特に過保護な迅や榎本のやつが何かしてしまう前に口を開く。 「なんだなんだー?いきなり来てその態度は。失礼にも程があるんじゃないですかねぇ?」 「いいから来い。此方もできるだけ傷は付けたくない」 カチーンと頭にきて顔が引きつるが、何とか怒鳴り上げるのを我慢する。 しかしなんだコイツは。 まるで簡単に俺をどうこうできるとでも言いたいような口ぶりじゃねぇか。 日南組の真志喜だと分かっていてそれを言うのか。 あーそうですか。 マジでブッ飛ばしてぇ…。 でも俺は昔みたいなガキじゃない。 ちゃんと立場というものを理解しているから我慢することだって… 「ンだとテメェ!真志喜さんに舐めた口ききやがって!」 「強引に真志喜を攫おうなんて、許せない」 「なっ…!?」 お前らが暴走してどうするー…!! すっかり頭に血が上ってしまっているバカ2人にずっこけそうになる。 もう嫌だ…。こんな時だけ息合わせやがって…。

ともだちにシェアしよう!