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前触れ18

と思っていた矢先に相手の拳が飛んできた。 おいとツッコミたくなる中、小さな動作でそれをかわし、その流れで距離を詰める。 デカブツ相手でも、これはどうだッ…! これまでも明らかに体格差のある連中とやり合ってきた真志喜が身につけた、渾身の回し蹴り。 それを相手はガードする余裕もなく、もろに腹にめり込ませた。 だが。 「っ…!」 立て続けに放った拳を受け止められ、手首を掴まれる。 そして体を引く前にグイッと引き寄せられ、思いっきり頭同士を打ちつけられた。 突然の頭突きに一瞬視界が真っ白になる。 それでもなんとか意識を保つ。 コイツ鉄かなんかでできてんのかッ? 硬すぎだろ…! まだ手首は掴まれたまま。 再び引き寄せようとする相手に対し、俺は咄嗟に持っていた上着を投げつけた。 視界を塞ぎ、一瞬生まれた隙を見逃さない。 思いっ切り相手の頭に回し蹴りを叩き込む。 「…ッ!」 流石にその体が揺らいだ。 地面に片膝をついた相手から素早く距離を取る。 そしてゴミ捨て場にあった木の板を瞬時に拾い上げた。 道具を使うのはあんまり乗り気はしないが、今はどうこう言ってる余裕はない。 膝をつく相手の後ろから、振りかぶった木の板を勢いよくその頭にぶつける。 バキッと鈍い音がして木片が弾け飛ぶ。

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