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苦杯2
本邸に戻るなり、駆けつけて来た連中に取り囲まれそれは大変だった。
なんでも気絶した榎本を連れてきた迅は、ろくな説明もなくすぐさま出て行ったものだからみんなは何事だと混乱したそうだ。
本部長である迅が慌てることなんて滅多にないものだから、ここまで騒ぎになってしまったのだろう。
反省しろと迅の頭を叩いてやりたかったが、今は絶賛喧嘩(?)中なので大人しくする。
変わりに誰よりも俺を気遣っていたじぃじがドスドス迅に手刀を叩き込んでいた。
「ちゃんとした説明はあるんだろうな?」
圧のある笑みを浮かべる正嗣から視線を逸らし、「迅のやつに聞け」と俺は退散する。
俺自身、今回のことはよく分かっていないから答えようもない。
部屋にこもってしまおうと廊下を歩いていると、前方に清さんの姿が見えて足を止める。
こちらを真っ直ぐ見つめた彼は、暫く無言だったがやがて静かに口を開いた。
「お腹、空いてませんか」
「え?……あ」
言われてみれば、家に帰ってから食べようと思っていたのでまだ晩ご飯を食べていない。
今更空腹感を感じてコクリと頷けば、清さんは「こっちへいらっしゃい」と俺に背を向け歩き出した。
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