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苦杯3
「冬馬に聞きましたよ」
「えっ」
夕飯をテーブルに乗せ、座布団の上に腰を下ろした俺は顔を上げた。
向かいでお茶を啜る清さんを、ついついポカンと見つめてしまう。
あの情報屋冬馬と清さんは幼馴染(清さん曰くただの腐れ縁だそうだ)だ。
基本清さんは誰に対しても敬語だが、俺の知る限り弟である凪さんと、冬馬に対してはタメ口である。
と言っても冬馬の方が年上らしく、清さん自身その実年齢はあやふやらしい。
まさに宇宙人だ。
話を聞いたというのは、やはり俺を探している連中がいるという事についてだろうか。
あいつめ、よくもペラペラと。
「今回のことは、それに関係があるんですね」
「う…」
尋ねるのではなく断定してきた清さんに言葉を詰まらせる。
黙り込む俺に清さんは小さく息を吐き、スッと俺を見据えた。
「無事だった、と判断しない方が良さそうですね」
「……俺もよく、分かってなくて」
「でも解決はしていないんでしょう」
「……はぃ」
「親父さんや正嗣さんには話さないんですか」
「……え、っと」
できれば話したくないというのは、俺の我儘になる。
前は実害がないことを言い訳にできたが、もう実際狙われたわけで、俺が日南組の真志喜だということも相手は知っている。
今後無駄な被害が出ないようにするためにも、ちゃんと話しておく必要があるだろう。
「……分かった。2人には、明日話すよ」
「そうですか」
叱られた後の子供のように俺が答えると、清さんは優しく微笑んだ。
ますます自分が子供のように思えて唇を尖らせる。
気不味くなって口に含んだご飯は温かくて、俺は無意識に強張っていた体をふっと脱力させた。
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