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苦杯4

朝の日差しが窓から差し込み、室内を明るくする。 布団から起き上がった真志喜は小さく息を吐き、目にかかる前髪をかき上げた。 今日、じぃじと正嗣たちにちゃんと話す。 迅のやつがどこまで説明したのかは分からないが、俺の口からはっきり言うんだ。 過保護なじぃじが大袈裟に事を動かさなければいいが。 あくまで周りが俺のせいで被害に合わないようにと思って打ち明けるのだから、俺自身はいつも通りにやらせてもらいたい。 そんな事を思いながら着替えて廊下に出る。 そして少しの違和感に足を止めた。 なんだかやけに静かだ。 もうみんな起きていてもいい時間帯だというのに、すれ違う人間もいない。 何か、胸騒ぎがする。 再び歩き出した真志喜の足取りは、先ほどよりも早くなっていた。 とにかく誰か見つけるために広間へと向かおうとする。 ──その時。 「…!」 声が聞こえた。 耳をすますと、騒ぎでも起きているのか穏やかでない声が聞こえてくる。 嫌な予感は膨らんでいくばかりだ。 ……とにかく、行ってみよう。 真志喜は何故かやけに聞こえる心臓の音を無視して、声の聞こえる方へと向かって行った。

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