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バカなやつ

襖を開けると、真志喜が勢いよくこちらを振り返った。 その顔は相変わらず真っ青で、酷く胸が痛む。 「迅…!あれから何が…っ、アイツは…!?」 「大丈夫。落ち着いて真志喜。もう鏑木はいないよ」 俺の服を掴み詰め寄る真志喜を、優しく抱きしめる。 その体は僅かに震えていた。 再びあの男に対して怒りが込み上げてくる。 「真志喜。俺は今回のこと、黙って見過ごせない」 「…っ」 真志喜の体がビクリと大きく揺れ、次には体を突き飛ばされた。 こちらを睨むようにして見つめる真志喜が口を開く。 「なんだよそれ。まさかわざわざ関わろうとしてんのか…?」 「どうせこのまま放って置いても、向こうは何かしてくるはずだ。だから…」 「駄目だッ!」 叫び声が部屋に響いた。 無言になる迅に、真志喜は言葉を続ける。 「警戒はすべきでも、自分から手を出すなんてあっちゃならないッ。アイツらとは極力距離を置くべきだッ」 「…随分と弱気なんだね」 「…ッ」 「迅」 流石に清が咎めるように名を呼ぶが、迅は何も答えない。 そんな相手に真志喜は詰め寄り、ガッとその胸ぐらを掴んだ。

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