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バカなやつ6
「ねぇ真志喜、お祭り行かない?」
「は…?」
凪さんが帰ってから、迅が急にそう切り出してきた。
ぼんやりと次のバイトはどうしようかと考えていた俺は間の抜けた声を出す。
「今日、夕方から近くの神社でお祭りがあるでしょ。正嗣のやつは放っておいて、2人で行こ」
「…俺は人混み嫌いだ」
「きっとそんなに混まないよ。人酔いしても俺がおんぶして…」
「させない」
また始まった。
迅はいつもお構いなしに、俺を色々な所に連れていく。
昔から俺を部屋から連れ出しては、心底嬉しそうな顔で歩き回っていたものだ。
「ほら、行こうよ。清さんにはお祭り行くって言っちゃったから、夕ご飯は用意されてないよ」
「な…」
「そうと決まれば、真志喜に着てもらいたくて用意した浴衣があるんだ」
「……」
逃すまいとポンポン話を進めて行く迅を呆然と見つめる。
俺の手を引く迅は、笑っていた。
その笑みに、何故だか眼鏡越しに見える瞳をつい見つめてしまう。
レンズが邪魔だ。
これではちゃんと、迅の瞳が見えない。
「真志喜の浴衣姿、見たかったんだ。きっと綺麗だよ」
「……」
違う。
俺は、綺麗なんかじゃない。
俺は汚れている。
こんな俺なんかより、ずっと──…。
『悪いけど、もうウチでは雇えないから』
「……あほらし」
俺、一丁前に落ち込んでんのかよ。
バイトも碌にできない。
迅のことが、眩しく思えてしまう。
なんだか酷く、そんな自分が惨めだった。
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