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欺瞞
「おい。いつまで駄々こねてんだ」
「……真志喜と離れたくない」
「ガキかアホ、ボケ、メガネ。俺だって仕事があんだよ。……まぁ、外出は駄目ってじぃじが譲らねぇけど…」
狙われている以上野放しにはできないと、過保護なじぃじに外出禁止を言い渡されているせいで事務仕事を手伝うように言われている。
今から気が重いが、とてもじぃじを説得できる気がしないので諦めるしかなさそうだ。
「ほら、さっさと行け」
「……」
子供みたいにムッとする迅は、観念したのかコクリと頷く。
やれやれと脱力すると、迅に抱き寄せられた。
そして反応する前にチュッと軽くキスをされる。
呆気に取られる俺に微笑みかけた迅は、名残惜しげに体を離した。
「それじゃあ、行ってきます」
それにハッと我に返った俺は、迅のやつにしてやられた恥ずかしさに、今度は此方がムッとした顔をする。
「はよ行けや、バカ」
「うん。くれぐれも気をつけてね、真志喜。何かあったらすぐに連絡して」
「わーったよ!もういいってば!」
赤くなった顔で声を上げる真志喜に、迅は笑みを深め背を向けた。
迅が出て行き、扉が閉められるのを見つめていた真志喜はポツリと呟く。
「……いってらっしゃい」
迅に対して、面と向かって言えない言葉はたくさんある。
他の相手にならなんとも思わないことも、何故か迅相手には素直になれない。
いや。寧ろこういう不器用な自分の方が、本当の面なのかもしれないが。
「直接言ってやればいいのに」
「おわっ!?」
突然背後から声がして飛び上がる。
振り返れば清さんが立っていて、俺は大きく息を吐いた。
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