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欺瞞3

「あー、もう無理ぃ…」 「ちょっと真志喜さんっ、まだ始めたばっかじゃないですか!」 やる気が出ずに机に突っ伏す俺に、榎本がワーワー煩く言ってくる。 仕事に必要なものが俺の部屋に運び込まれ、榎本の監視のもとデスクワークに励んでいた。 でもやっぱ、俺に事務仕事は向いていない。 あー外に出たい、ナンパしたい。 「そもそも外に出たい目的が不純なんですよ真志喜さんは!」 「うっせぇなー。人の欲求に不純もクソもあるかよ」 大体こいつが純情チェリーボーイなだけだろ。 中高共に男子校という地獄のような環境にいたらしいこいつは、丸っ切り異性に免疫がない。 女の子と話すだけで顔真っ赤にして、碌に会話もできやしねぇ。 俺が偶にナンパに同行させてやっても、後ろでカチカチに固まってるだけだし。 「早々に疲れちゃったかい?真志喜くん」 「ん?あ、西倉さん」 襖が開き、見れば西倉さんがお茶の乗ったお盆を持って立っていた。 慌てた様子でお盆を受け取る榎本の後ろから、俺は声をかける。 「西倉さんがお茶出しだなんて…、どういうこと?」 「いや、廊下で偶々清さんとすれ違ってね。そろそろ真志喜くんが駄々を捏ね出すだろうからってお茶を運んでたのを、代わりに引き受けたんだよ。清さんって、結構忙しい人だから」 「すごい、合ってる…」 感心したような榎本の言葉にカチンとくる。 誰が駄々を捏ねたってんだ。 清さんはオカンポジだからまだ良いとして、榎本に言われると腹が立つ。

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