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欺瞞10

「っ、真志喜さん…っ?」 「ケリをつける。いつまでも負けたままでいられるか。それに、この状況じゃ素直に行かせてくれそうにねぇ」 自分が足止めする。 そう言い降りた真志喜だったが、続いて開けられたドアにムッとする。 「なんで2人とも降りてんだ!」 「真志喜さん1人を置いていけるわけないですよ!」 「そうそう。というかそもそもこれは真志喜くんを守るってことで起きてる事態なんだから。ここで置いてったら元も子もないでしょ」 「う…っ」 もっともなことを言われ、迅探しで頭がいっぱいだった真志喜は押し黙る。 そして少しの間試行錯誤した後、渋々納得することにした。 今この状況で自分がどうこう言える立場ではない。 「荒木ってやつとケリをつけたいなら、他のは俺らに任せて」 「真志喜さん!下克上してやって下さい!」 「俺はあいつより下になった覚えはねぇ!」 目尻を吊り上げ、前方の荒木を睨み付ける。 そう。俺はあいつより下なんかじゃねぇ。 「次こそブッ潰す…ッ」 *** 「オラァ!」 相手の繰り出した拳をかわし、その顔面に右ストレートを叩き込む。 組に入ってから、隙があらば真志喜さんに組み手を申し出ていたのだ。 散々ボコボコにされた分、大抵の相手になら負けはしない。 しかし今回、何処から湧いて出たのか敵の数が多い。 10人はいる。 そうなると大分攻撃も食らう。 「大人しくしやがれッ!」 「ぅおっ!」 背後から図体のデカい男に羽交い締めにされた。 顔を上げれば他の男が鉄パイプを振り上げている。 マズい…っ! 「ァガッ…!」 「!」 「大丈夫かい?榎本くん」 鉄パイプを振り上げていた男に回し蹴りを叩き込んだ西倉さんが、いつもと変わらない様子で声をかけてきた。 それに俺は咄嗟に羽交い締めしてくる相手の顎に頭突きを喰らわせる。 そして緩んだ腕から脱して両膝を鳩尾にめり込ませた。 「た、助かりました…!」 お礼を言った俺に、彼は笑顔で手をひらひらと揺らす。 流石は西倉さん、全然余裕そうだ。 マジでかっけー…。 「ハッ、いかんいかん!俺は真志喜さんという心に決めた兄貴が!」 「コラ、他所ごと考えない。次来るよ」 「はい!」

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