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欺瞞12

相手の攻撃をもろに喰らえば、一溜りもないだろう。 一発で倒れる危険だってある。 なので下手に攻撃されるわけにはいかない。 何にしても、掴まれることだけは避けたい。 腕で防がれた脚を素早く戻す。 とにかくコイツ、ガードが硬い。 碌に攻撃が入りやしない。 「オ…ッラァ!」 ならばと渾身の回し蹴りを打ち込めば、腕でガードされたものの、それなりに堪えたようだ。 相手が僅かに眉を潜める。 「痺れてんじゃねぇのかよッ!」 さらに立て続けに蹴りを打ち込めば、相手はガードせずにそれをかわした。 その隙にしゃがみ込み、俺は地面に手をつく。 次には素早い切り返しで飛んできた右ストレートをギリギリでかわした。 少し掠ったか、頬がヒリつく。 図体がデカいくせに、俊敏な動きしやがって。 更に距離を詰めてこようとする相手に、俺は握っていた手を振った。 さっき地面に手をついた時に掴んだ砂を、相手の顔にぶっかける。 「…っ」 流石に不意打ちだったようで、目蓋を閉じた荒木。 俺はその隙を見逃さず、爪先で素早く強く、まっすぐに相手の脛を蹴りつけた。 すると荒木バランスを崩し、頭が下がる。 「こん、のッ!」 すかさずその頭を両手で持って、頭を強く引き呼び込むようして反動をつけた。 そして自分の額を相手の鼻めがけてぶち込んだ。

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