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欺瞞15
「ぐっ、ぁ…っ」
激痛が走る左腕を押さえ、真志喜は呻いた。
他にも、体のあちこちが悲鳴を上げる。
正直もう、限界だ。
ホント、勘弁しろよ…。
「…おい榎本、生きてるか」
「な、なんとか…」
声をかけると、うつ伏せに倒れたままの榎本がくぐもった声を上げた。
それにホッと胸を撫で下ろす。
「真志喜さん、そいつは…」
「…ん。気ぃ失ってる」
動こうとしない荒木を見下ろし、息を吐いた。
勝った。
やり返してやったぜ。
まぁこっちもボロボロで、正直立ってるのもやっとなのだが…。
それでも、今からすぐに迅の所へ向かわねぇと。
「2人とも、無事かいっ?」
「!」
その時聞き慣れた声がした。
西倉さんだ。
どうやらそっちも方が付いたみたいだ。
流石西倉さん。
無事でよかった。
安堵を覚え、やって来る彼の名を呼ぼうとする。
しかし、その瞬間。
バチィッと、鋭い音が辺りに響いた。
「っ…!?」
「西倉さん!?」
西倉に目を向けた真志喜は瞠目する。
視界には、スローモーションのようにゆっくりと崩れ落ちる彼の姿。
次にはドサリと倒れ込んだ西倉に、真志喜と榎本は声を上げていた。
なんだ。
一体、何が起こっている。
唖然とする中、倒れた西倉さんの側に立つ2人の男に目を向ける。
その中の1人の手には、西倉さんに打ち込んだであろうスタンガンが握られていた。
「へー、すげぇ。ホントに荒木さんやられちゃったよ」
感心したように声を上げた若い男は、軽い足取りで荒木の元まで歩み寄る。
そして興味深そうに見下ろし、チョンチョンと突き始めた。
目の前の光景に、真志喜は言葉がなかった。
絶句し、何もできずに立ち尽くす。
先程スタンガンで西倉を気絶させた男。
長身で、顔立ちは整っているが、その目つきはまるで蛇のように細く鋭い。
以前と少し見た目は変わっているが、雰囲気からして間違いなかった。
「よぉ。久しぶりだなぁ」
「…っ」
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