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暗闇2

一瞬で嫌な予感が頭を過った。 もしや…、と最悪の事態が予想され汗が流れる。 何かをどちらかが口に出す前に、背後から人の気配がして2人は振り返った。 「っ、迅…!」 「え、どうしたの2人とも。こんな所で…」 心底不思議そうな顔をする迅に、清は即座に問い返す。 「迅。ここで何をしていましたか?」 「いやそれが…。指定された場所に来てみたら、いきなりチンピラたちに絡まれてさ。今それを鎮圧したところなんだけど」 2人の様子で何かを察したのか、迅は「まさか…」と呟く。 その時には正嗣が後ろにいた若衆に声をかけた。 「真志喜たちから連絡は!」 「ま、まだ入っていません…!」 「クソッ!」 今すぐにかけようと携帯を取り出した正嗣だが、その前に清の携帯が鳴った。 すぐに出た清は珍しくその顔を険しくさせる。 「やられましたね…」 真志喜が連れ去られたと榎本から報告が入り、3人は言葉を失った。 「冬馬を呼びましょう」 次にはそう清が提案する。 情報屋の冬馬に手を貸してもらい、なんとか突破口を探ろうということだ。 正直迅は、今すぐにでも助けに行きたいと思っているだろう。 湧き上がる怒りに、握り締めた手からポタポタと血が流れている。 正嗣は何も言わずに、迅の返事を待った。 その場に静寂が訪れる。 「……分かった」 やがてそう、迅は答えた。 それに清は、すぐに冬馬へと連絡を取る。 迅はその目蓋を閉じ、細く息を吐いた。 真志喜、少しの間耐えてくれ。 必ず、助けに行くから。

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